論文執筆計画
2021/1/14
2020/7/21
『デザインプロセスの記録・視覚化・省察からデザインの学びを抽出する〜デザイン初学者がデザイン実践をする方法とその可能性〜』というタイトルで、原田研究室の西山が発表させていただきます。
本研究の目的は、デザイン初学者が自らのデザインプロセスを記録、視覚化、省察することで、デザイン初学者がデザイン実践研究をする方法とその可能性を実践的に探ることです。この研究によって、デザイン初学者のデザインの学び方を呈示することを目標としています。
デザイン初学者である私はこれまで、積極的に課外活動やリアルな現場でのデザインに参加してきました。
ここで、私がこれまでに行ってきた「デザイン」を整理してみると、
というデザインを行ってきたということがわかってきました。これらは一般的な製品開発や授業としてのデザインとは異なる、自由度の高いデザインプロセスでした。このようなデザイン、ここでは仮に「野生的デザイン実践」としていますが、今後の実践や研究を通して私の目指す「デザイン」を端的に表す言葉も探していきたいと考えています。
次に、私自身の経験から、デザインの授業と課外活動の違いを表にまとめてみました。
授業ではデザインプロセスが基本的に教員から示され、課題に取り組んでいくことで進めていくのに対して、課外活動ではデザインプロセスも自分で構築していく必要があります。
制約面では、基本的に授業では時間、テーマ、材料などの制約のもと取り組むのに対して、課外活動では制約も自分で設ける必要がある場合があります。
成果物に対する評価では、授業は教員から成績がつけられるのに加え、同じ課題に複数の人が取り組んでいるので、他者の作品との比較も可能ですが、課外活動ではできません。
また、授業は学びが得られるように設計されている上に、シラバスに何を学んで欲しいかが明記されています。それに対し、課外活動では、実践から何を学びとるかは実践者自身が考える必要があり、自ら学びを得ようとしないと何も学び取れないという実感があります。
以上のように、授業と比べて課外活動では、デザインプロセス、制約、評価、学びの全ての面において、実践者自身が定める必要があり、なんとなく参加しただけでは、何も得られないという実感があります。また、授業では経験できなかった学びのチャンスが豊富にある一方で、授業のように学びのための設計がされていないため、初学者にとっては、課外活動の実践から学びを抽出することは難しく、せっかくの学びのチャンスを逃してしまいがちであるという問題があります。
また、デザイン初学者が、リアルな現場でのデザインを経験することで、架空の社会の一部分を取り出したデザインではなく複雑な実社会を対象とした、より実践的なデザインが経験できるというメリットがあります。しかし、こちらも、デザインの成果を判断するのが難しかったり、十分な学びを抽出することが難しいという問題などもあります。また、様々な分野の人との対話を通したデザインが経験できる一方で、デザイナーへの理解を構築していくという高度なスキルも必要になってきます。
以上のように、デザイン初学者が、授業以外やリアルな現場でのデザイン実践を行うことは、多くの学びのチャンスがありますが、そこから学びを抽出するためにはそのためのスキルが必要になってくると言えます。
以上のようなことを背景に、私の卒業研究では、デザインプロセスの記録・視覚化・省察を試みました。しかし、デザインプロセスをどのような視点で省察するべきかわからなかったため、視覚化の意図が定まらず、十分な学びが抽出できませんでした。また、デザイン実践と並行して記録を行うと、記録に時間がとられ、実践がなかなか進まないという問題も浮き彫りになりました。
そこで、デザインプロセスをどのような視点で省察するべきか?また、デザイン実践と並行して必要な記録をとる方法はないか?という2つの問いをたてました。
本研究では、これらの問いに対して、2つのアプローチから研究していきます。デザインプロセスをどのような視点で省察するべきか?という問いに対しては、これまでに行ってきた過去のデザイン実践を題材に、初学者にとって有効なデザイン実践研究のかたちを模索します。デザイン実践と並行して必要な記録をとる方法はないか?という問いには、新たに取り組むデザイン実践を題材に、初学者のデザイン実践研究に必要な記録から省察までの一連の方法を実践的に探っていきます。
デザインプロセスの記録・視覚化・省察の内容と、それらを実践してわかった考察を、デザイン初学者である私の一人称視点で記述します。一人称視点で記述する目的は、実践した本人にしかわからないこと、語れないことを記述するためです。
ここからは、研究の経過報告をさせていただきます。
まず、自分のデザインプロセスを省察する視点を探るため、他のデザイナーのデザイン論との比較を試みました。今回は、ブルーノ・ムナーリの著書『モノからモノが生まれる』から、「企画設計の図式」を参考に考察しました。
ムナーリの「企画設計の図式」は、作業の手順を示すのではなく、ムナーリの考えに基づいてデザインプロセスを書き出すとこうなるという書き方がされており、ムナーリ自身も完全な図式ではないと言っています。
この、ムナーリの示す「企画設計の図式」と比較することで、自分のデザインは、作業的であり、意志が明確でないこと。目の前の作業しか考えられておらず、全体が見えていなかったことなど、デザインプロセスを省察する視点を得ることができました。
他のデザイナーのデザイン論と自分のデザインプロセスを比較してみたことで、
という考察が得られました。
デザイン実践と並行して必要な記録をとる方法を模索するための題材としては、情報ライブラリー(大学図書館)の利用促進を目的とした、情報共有WEBサイトのデザインに取り組んでいます。このプロジェクトは、図書館スタッフ1名と私の2名で行っています。この実践では、図書館から利用者への情報発信だけでなく、利用者同士の情報共有の場も必要であると考え、実現に向けて制作しています。
このデザイン実践に並行してデザインプロセスの記録を行うためのツールとして、デザインプロセス記録用のブログサイトを制作しました。日々の活動内容をブログの記事として投稿し、デザインレビューや対話の内容をコメントとして残せるようにしています。
このような記録方法をとることで、
という効果がありました。
今後の方針としては、
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大変おもしろい研究でした.
実はピアノの学習支援というドメインでびっくりするくらい全く同じことを考えて取り組んでいました.西山君の考え方ややり方は正しいと思います.
もしよければ,下記の論文を読んでみてください.
どこかで本研究について議論したいと思っています!
ピアノ練習状況の可視化および気づきのアノテーション機能を持つ学習支援システムの設計と実装
https://1drv.ms/b/s!AiPu-8Q-9Ogpgs4mcpvhCA_ukNBYGA?e=AdkNsE
(竹川先生)
活動記録のブログは、誰かに使ってもらうことも必要かもしれない。
(竹川先生)
おもしろい研究だと思います。実際のブログサイトが見られたらいいかなと感じました。
(学生)
初学者と言ってもスキルや知識に幅があると思うので、細かい部分の定義を行うと研究対象が明確になると思いました。
(学生)
何を学ぶのかなどがわからないとやる気そのものにも影響すると思うので役に立つ研究内容だと思いました。
(学生)